コミュニケーションの解剖学

鈴木(2012)は、コミュニケーションのスキルは3つに分解でき、コミュニケーションはその3つの組み合わせでしかないという。それは「主張(tell/speak)」「質問(ask)」「傾聴(listen & reflect)」である。


また、人を説得しようとする場合、私たちのコミュニケーションは「意見を押し出す=Push型」か「意見を引き出す=Pull型」のどちらかであるという。Push型は「主張」によって自分の考えていることを説得力のある理由とともに論理的に説明するもので、Pull型は「質問」と「傾聴」を繰り返すことで相手との共通項や同意できるポイントを探る方法である。この両方をマスターすることで素晴らしいコミュニケーターになれると鈴木はいう。


話す態度についても、相手をよく観察し、相手の良いところを見つけてほめつつ、基本的に相手の意見を肯定する「ポジティブな態度」が望ましいと考えられるといいます。あるいは、客観的な事実を正確に伝えるような場合は、中立的な態度で事実にフォーカスして淡々と話すという態度も必要でしょう。否定的な態度は相手との人間関係を壊してしまうため望ましくないと鈴木は指摘します。自分の普段の言動をしっかり認識し、否定的な言葉を口にしない練習をするとよいという。


聞く態度については、私たちの普段のコミュニケーションは、フォーカスが自分にあたっていて自分に関係のある個所だけを部分的に聞くようなパターン「ME」に陥りやすいが、フォーカスを相手にあてて相手に共感したり、同情したりする「傾聴」もしくは「YOU]や、フォーカスを相手と自分の両方にあて、お互いの共通項を探ったり、お互いにしっかりつながったりして一緒にアイディアを発展させたりする「WE」の重要性を説明しています。


そして、目的に応じて「I-Mode」「You-Mode」「We-Mode」のコミュニケーション・モードを、車のギアのように使い分けるのがコミュニケーションを円滑にするうえで効果的であると説く。I-Modeは説得モードで、主張(Push)・論理・批判を組み合わせるものである。You-Modeは、共感モードで、質問・傾聴(Pull)・感情・肯定を組み合わせるものである。We-Modeは創造モードで、質問・傾聴・主張(統合型)を組み合わせるものである。