クリエイティビティを高める脳の習慣

築山(2006)は、ひらめき、想像力、クリエイティブな才能などと呼ばれるものは「脳の総合力」だという。具体的には、意識的に情報を取る力、記憶を引き出す力、思考を整理する力、情報を組み立てる力、組み立てたものを分かりやすく人に伝える力といったものが一定レベル以上に鍛えられていて初めてクリエイティブな人間になれるというわけである。さらに、有効なアイデアを生み出し続けるには、知識や語彙を増やす努力もしていかなければならないという。


このように、クリエイティビティが脳の総合力であるという前提のもと、アイデアを生み出しやすくする方法として、築山は3つ紹介している。1つ目は、「何の役にたつのか」より「誰の役に立つのか」を重視して考えることである。後者のほうが前者よりも問題解決のゴールが絞り込まれることによって選択肢を限定することができるからである。前者のような考えをすると選択肢が広がりすぎ、取り留めがなくなってしまうと築山は言う。


2つ目は、「アイデアは情報の組み合わせ」と考え、常にどこかにヒントを求めることである。「これとこれを組み合わせたらどうなるだろう」「これをあちらに応用したらどうなるだろう」と、あるものをヒントにして組み合わせてみる。クリエイティブな才能というのは、その組み合わせ方のセンスや、他の人が目を向けていない意外なところから情報をとってくる力にかかっていると築山は指摘する。皆が考えている軸とはちがう軸から情報をとってきて組み合わせるのである。


3つ目は、情報を書きだすことである。書いてそれを見て、読んで耳から情報を入れ直すことで情報が二重三重に脳に刻み込まれるし、忘れてしまっても書きだされた情報から思い出すことができる。情報を組み合わせるときも、書きながら考えることが有効だという。書いたり消したり並び替えたりすることによって、情報同士の関連性や重要度の違いが見えやすくなるからである。こまめにメモをとり、書きながら考える習慣をつけることである。


そして築山は、上記の3つをより強化するのに有効な習慣として、活動をマルチにして人生を楽しむことが重要だと説く。つまり交友範囲を広げ、活動を多面的に豊かにし、いろいろな場面でいろいろな世代・職業の人たちと交流し、コミュニケーションの中で相手の身になって考える機会を日常的に持つという習慣である。そうすれば意外性のある情報も得やすくなり、発想が豊かになるのだという。要するに「興味を持って何でもやってみる」「人生を積極的に楽しむ」ということである。


なお、築山は、クリエイティビティに関わらず、脳の機能を高め、維持するためには、生活のリズムを崩さないようにすることが大切だと説く。つまり、朝一定の時間に起きて、脳のウォーミングアップをし、時間の制約のある生活をする。そのうえで、家事や雑用、小さな仕事でも積極的にこなし、前頭葉を鍛えていくことによって、脳機能の低下を防ぐことができるのだという。