脳力を最大限に活用する

人間にとって最大の武器は頭脳である。築山(2012)は、生理学の見地から脳が持つパワーを最大限に活用して勉強や思考の効果を高める方法を紹介している。勉強や知的生産においては、「脳が冴えている状態」を計画的に作り出すことができるかが重要で、それによって勉強や知的生産の効率に違いがでてくる。どのように計画的に「脳の覚醒状態」を作り出すのだろうか。築山が推奨するのは次の3である。


1つ目は、知的作業の前に体を動かすことの重要性を築山は示唆する。脳も体の一部であるので、身体を動かすことによって脳の働きも良くなるわけである。脳全体に血液も巡りやすくもなるという。散歩がクリエイティビティを高めるのもこの道理にかなっている。


2つ目は、「作業興奮」を作り出すことである。例えば、知的作業をするまえに机を片付けたり、簡単な作業をすることである。簡単にできる作業をこなすことで小さな成功体験を作り出し、それを脳が「快」と解釈するように仕向けるわけである。


3つ目は、「緊迫感や切迫感による脳の興奮」を作り出すことである。代表的なのは、時間制約を設けることである。例えば、朝の出勤前の限られた時間や、通勤で電車に乗っている時間を勉強時間に当てるなどの方法である。そうなると、時間が限られているために緊迫感、切迫感を生み、それが脳の覚醒を高めるというわけである。


1日のうちで、脳の覚醒がピークに達するのは、2〜3回しかない。したがって、脳が冴えた状態を計画的に作り出すと同時に、1日のうちに数度しかないそのピーク時に勉強や知的生産を行うようにするということが大切なのだと築山は示唆するのである。とりわけ、脳にとって負荷の大きい作業を最も脳が冴えた状態のときに行うのがベストである。


さらに、脳が覚醒状態にない状態であっても、つまり脳が休んでいる状態であっても、情報や記憶の自動整理が行われている。例えば、勉強した内容を脳に定着するような作業は必ずしも意識的にしかできないのではなく、休んでいるときや寝ている時でも自動的に行われていることを築山は示唆するのである。したがって、脳を休ませることも大切なのである。別の言い方をすれば、脳の活動と休息の繰り返し、緊張と弛緩のメリハリをつけることが効果的なのだという。