問題意識をぎゅうぎゅう詰め込んで散歩しよう

野口(2011)は、知的作業の大部分は、もともと戸外で行われていると指摘する。書斎や研究室でやっているのは、そこで生まれたアイデアを整理し記録するだけの作業、あるいはデータを収集したり計算したりするだけの作業だというのである。


そもそも、創造的な仕事において重要なのは、発想と分析であると野口は指摘する。要するに「考えること」である。これまで人類の創造の中核的な部分は「ひたすら考える」ことで実現されてきた。ニュートンアインシュタインも、本質的には「考えて考えて、考え抜いた人」だといえるわけだ。ビジネスであっても重要なのはアイデアであり、効率化ではないという。創造的な仕事についていえば、発想、着想、分析などが重要度からいったら8割を占めるという。


野口は、アイデアを出す最良の方法は「歩く」ことであることを示唆する。ただし、歩く前に頭の中を問題意識で一杯にしていくことが必要である。歩くことそれ自体が大切という意味ではなく、考え続けることが大切なのである。考え続けていれば、何かの拍子にアイデアが湧く。アイデアは姿勢を変えると出てくる場合が多いので、机に向かって仕事をし続けても効率的ではないのだという。自身、歩きながらアイデアが浮かぶことは頻繁にあると野口はいう。そうしたら立ち止まってメモをするのだという。


イデアは新しいものとの接触で生まれることが多いため、知的な人々との会話も大変重要だという。相手と話している間に「問い」が生まれ、「問い」が、執筆などでも最も重要な「メッセージ」を生み出す土壌となる。知的であり、いい質問をしてくれる人、意味のある問いを発してくれる相手は重要だというわけである。