お金の上手な使い方

安田(2008)によれば、お金の使い方とスキルを磨く最もよい方法は、明確な目的意識を持ちながら、できるだけ大きな金額を動かしていくことである。そして、成果がでなかったときにはその理由を考え、同じ失敗を繰り返さないようにしていくことである。


また、無駄遣いはいけないというが、それは不必要な無駄をしないということ。「豊かにするための無駄」は大いにするべきである。質や美意識を基準とした贅沢を楽しむ経験がその例である。家を売ってワインを買ってしまうほどの極端な贅沢。他人から見ればキチガイだと思われるかもしれない。しかし、「そのおかげで自分の人生が豊かになった」と感じられるような無駄遣いを受け入れることによって、最終的には勝負に勝てるだろう。


川北(2008)も、お金の使い方を知っている人はお金の使い方にメリハリがあり、ムダ金は出さないが、出すべきお金は惜しげなく出す。ここ一番というときに「生き金」が出せるという。お金の使い方でもっとも重要なのが自己への投資であるが、趣味や遊びに使うお金も、自分を磨くための自己投資であり必要経費だと考えられる。


苫米地(2009)は、お金持ちのメンタリティを身につけることの重要性を説く。例えば、数百年後の未来を考えながら投資をする。たくさん借りて、大きくして、そして事業性のあるものに投資する。煩悩を大きくして、自分のためといった小さなレベルではなく、人類のため、地球のため、他人を幸せにするためにお金を使おうとする。要するに、お金持ちがどのようにお金を使うかを真似することによって、なぜお金持ちがお金持ちになったのかの行動原理まで身につけることができる。また、そういった人々が注目することの半歩先を行けば、後から多額の投資がついてきて、事業が成功していく。大きなお金を「生き金」「投資」として使うためには、現状の収入や貯蓄を念頭におくと、それが制約条件となり投資額が縮こまってしまうため、そういった「大切なお金の使い方」に関しては、お金持ちになったつもりで行動すれば、大胆に多額のお金を動かすことができるのである。


本田(2006)も同様に、お金持ちの気分で生活することにより「豊かさ意識」を身につけることができることを示唆する。例えば自分の資産より4桁多く持っているつもりで生活する。本当の大富豪も所有資産のほとんどの部分は普段の生活では使わないわけだから、実際の生活の仕方を考えれば、実際に使うお金としては大富豪と条件が同じである。それでいて、大富豪がお金を増やしてきたのと同じマインドや行動原理を身に着けることができるのだろう。


また本田は、金持ちになるためのお金の五原則として、(1)たくさん稼ぐ、(2)賢く使う(節約)、(3)がっちり守る、(4)投資する、(5)わかちあう、を挙げている。たくさん稼ぐ力を身につけることも大切だが、賢く、「生き金」を使うことも大切である。つねにそれ以上の価値のあるものとお金を交換するということである。また、余計な税金を払ってしまったり、いろんな人に持っていかれないよう、がっちりと守り、ビジネスを所有するなどしてお金をうまく運用し、そして、生まれた富を社会に還元する(わかち合う)。富を分かちあうことで、さらに富を生み出す力が増加する。


苫米地(2009)によれば、ユダヤ人の論理も勉強になる。ユダヤ人は、(1)教育、(2)ダイヤ、(3)その時代に貴重だとされる貴金属に投資してきたという。結局のところ、自己投資とは、安田(2008)の言うところの、「必要なときに必要なお金を作り出せる能力」だといえよう。まさにこれさえあれば、必要なときに、大きなお金を、大胆に使うすることができるのである。