国の力はどう決まるのか

佐々木(2011)は、国の力がどう決まるのかに関して、代表的なリアリストであるハンス・モーゲンソーの言説を紹介している。


モーゲンソーが示す伝統的な分析手法は、国力を形成する要素として「地理」「天然資源(食料と原材料)」「工業生産能力」「軍事力(技術、指導力、兵力の質と数)」「人口(人口分布と人口動態)」「国民の特徴」「国民のモラル」「外交の質」「政府の質」を挙げているという。それに、政治学者のクラウス・クノールが、過去にはなかった「核兵器」というファクターを織り込んでいると説明している。クノールによる、国力の表現式は以下のようになる。

  • 国力=核能力×(国土+人口+工業生産力+軍隊のサイズ)


さらに、アカデミズムや軍事関連で最も広く使われてきた分析手法として、レイ・クラインによる、次のような公式を紹介している。

  • 国力=(C+E+M)×(S+W)
  • C=臨界量(人口、領土など)、E=経済力(収入規模、天然資源、食料、工業力、貿易量など)、M=軍事力、S=国家戦略、W=国家意思(国家の統合度、指導力など)


つまり、「人口」「国土」「経済力」「軍事力」が基礎の力としてあり、「国家戦略」と「国家意思」を掛け合わせることで、総合的な国力が導き出されると説明している。


ただし、佐々木は、これらの伝統的な手法が今日も有効かどうかは議論が分かれるところだとし、現代では、産業の中心が農業や重工業から知識産業にシフトしたことにより土地の大きさの重要性が下がっていることから、「経済力」「軍事力」「政治力」「文化力」の4つの力と、「人口」と「地理」(国土の大きさや天然資源の量など)の2つの要素を組み合わせる方法が、最もオーソドックスなパワー測定法といえるのではないかと論じている。