中国人の力を借りる日本人材の活性化

佐々木(2011)は、日本と中国は将来、政治・経済・軍事などあらゆる面でライバルとなるだろうが、中国でくすぶっている野心と能力のある人を日本に惹きつけ、仲良くすべきだと論じる。それが、少子高齢化の進展に伴う人口減少、労働力の向上のみならず、日本の経済界・学界・言論界の質の向上にもつながるはずだという。その理由は、中国人は日本人にはないいくつかの特徴を持っているからだという。


第一に、中国人は個人主義で空気を読まない。そうであるからこそ、例えば「上司や周りが帰らないので帰りにくい」ことによるだらだら残業や生産性の伴わない長時間労働を改善する糸口になると述べる。第二に、中国人は素直で、物怖じしない。照れ屋の中国人は少なく、積極的に質問し、ガツガツ本音で議論する。そのため、中国人が議論に交わることで、日本人の思考も大いに活性化すると説く。第三に、中国人は戦略的思考に長けていて、全般的に思考のスケールが大きい。全体像を頭に叩き込んだうえで、合理的に利害を計算し、明確な戦略の下に動く。これは、中国は世界の中心の国で、自国を中心に世界を俯瞰するDNAを継承しているがためで、島国であった日本人が適性を持たない分野だという。


このような特徴を備えた「優秀な」中国人を日本に招き入れることのメリットは大きいと佐々木は指摘するのである。例えば、佐々木は、日本の大学の学生を1割くらい中国人にして、授業は半分英語にして、日本人と競争させてみてはどうかと提案する。英語も日本語もできて、その上、成績のいい中国人学生が周りにたくさんいたら、日本人学生のお尻にも火がつくはずだと論じるのである。そして、日本企業はそうした優秀な中国人学生を積極的に雇って、中国市場攻略のキーパーソンに育て上げればよいのだという。