そもそも流議論術

谷原(2009)は、人を動かすためのさまざまな質問術を紹介している。たとえば、その中に「そもそも流議論術」というのがある。相手の反論にあった場合など、相手に反論をすることなく、価値観の部分に揺さぶりをかけるように質問をしていく方法の1つである。そのためには、まず「この反論の根底にある価値観はなんだろう」と考え、その価値観を見つけたら、それを覆すように努力するのである。


そもそも流議論術は、まず「そもそも・・・」の質問で、大前提となる価値観を打ち出す。「そもそも、・・・についてどう考えるか」というような質問である。そして、「ところで・・・」の質問で、判断基準を打ち出す。「ところで、この問題は・・・ですよね」というように、議論の対象となる具体例が、そもそも論と結びつくことを示す。そして「だとするならば・・・」の質問で、あてはめを行う。「だとすれば・・・ということになりますね」というように、打ち出した大前提すなわち価値観と整合するかたちで、結論を導くことができるのである。


谷原はそのほか、以下を含む質問のテクニックを紹介している。


相手の関心を見抜く「質問ブーメラン」

  • 相手が質問してきたときに、同じ内容で「あなたはどうですか」と質問する。これは、相手が聞いてきた内容は、相手が何らかの関心を持っているという仮説に基づいている。これによって相手の関心を見抜くことができる。

本音をひきだす「仮にクエスチョン」

  • 「仮に○○だったら、どうですか」という質問をする。相手はあくまで仮定の話なので、本音を話しやすく、相手の情報やニーズを引き出すことができる。

相手をその気にさせるシナリオ質問術

  • 相手を動かす原則として「まず感情を動かし、その後理性に訴える」というのがある。まず感情を動かす質問をし、「○○がしたい、ほしい」という欲求を発生させる。そして、理性に訴えかける質問をし、その欲求を論理的に正当化させる。このように、人が実際に行動するまでにたどる思考を体験させるように質問のシナリオを作る。

ポジティブ応酬話法

  • 相手が反論してきた場合、それは断る理由を開示したことになる。それを巧みに捉え、「それがクリアになったら承諾してくれるのですね」というように、ポジティブに解釈して応酬していく。

心理テクニックを活用した質問術

  • 少なくなったり、すぐになくなってしまうことを強調する「希少価値の法則」、まず相手に何かを与え、そのお返しをしなくてはならない気持ちを誘発する「返報性の法則」、より大きな依頼をして拒絶させてから、それより小さな依頼を承諾させる「ドア・イン・ザ・フェイス」、小さなイエスを繰り返させて徐々に大きなことを承諾させる「一貫性の法則」、「皆やっています」「すでに多くの人が使用している」ことを強調する「社会的証明の法則」などを使いこなす。