受験で身につく能力

鎌田・岸本(2010)は、中学受験において鍵を握るのは「理科」であると述べた上で、受験によって身につく重要な能力について言及している。理科の入試問題は、そういった能力を身に着けるうえででも最適なものだというのである。


たとえば、限られた時間のなかで正解を説く「時間の戦略」、出題者の意図を汲み取るなかで養われる「他人の気持ちを推量する方法」、複雑な問題文からポイントをつかむ「長い話のなかで本質を見抜く力」、そして、想定外の事態に遭遇したときの「危機回避能力」などだという。


さらに、未経験の出来事からイメージを構築し、解決して行く方法や、本で読んだ内容を要約する技術や、与えられた課題を最小限の努力で解決する方法も含まれているという。たとえ不完全であっても、成果を出す生き方が、受験によって培われるのだという。これは、既存の知識や不完全な情報を最大限に活用して成果に結びつけるという、社会に出てから役に立つノウハウともいえる。


たしかに受験というのは、限られた時間内で、物凄い集中力で問題を理解し、自分のもっている知識や経験を総動員し、あらゆる事態に対してもなんらかのかたちで乗り切るという経験を伴う。自分の持てる能力を最大限に出し切る努力をする、ものすごく濃い時間経験であるともいえよう。