絶えず嵐の中にいると思うこと

蟹沢(2010)は、著書の中で、俳優児玉清氏の以下のコメントを引用している。

航空力学の権威、佐貫亦男さんは著書「不安定からの発想」で、ライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功したのは大気中が常に変化する不安定なものだととらえ、それを人間の手で操縦することで安定を保たせるのだと考えたからだという趣旨の説明をしています。人生もその通りではないでしょうか。
人が飛躍するためには最初から安定を求めてはいけない。不安定な状態を自分の力で安定させてやろうと勇気を出してこそ、道が開けるのです。

児玉氏本人によるコラムにも、以下のような部分がある。

「安全を掴(つか)むな、絶えず嵐の中にいると思え」。そう心に誓ったのは、東宝撮影所の専属俳優として、9年間在籍している間のことであった=写真は当時。「雑魚であってたまるか!!」とファイトを燃やして俳優の道についたものの、前途多難といった言葉では到底言い表せないほど、真に苦難の道であった。専属3年目に「別れて生きるときも」で大役をもらいデビューし、松本清張原作の「黒い画集 ある遭難」までは順風満帆だったが、まったく身に覚えのない中傷から突如、奈落の底へ突き落とされることとなった。東宝から「もう君は売らない」と宣告されたのだ。他人(ひと)の言葉の恐ろしさを肝に銘じたのはこの時だ。