手段が目的化するとき

人生や仕事において大きな目標があるとしよう。その目標に近づくには、ステップを踏んで、その「手段」としての活動をコツコツとやっていく必要がある。ときに、あるステップに到達するための手段としての活動は困難を極め、まずはそのステップを完了する目標を立て、その目標に向かって自分の資源を集中させる必要がある。


ここまでは良いが、実はこれが「手段が目的化する」原因となりがちだ。自分の持っている資源を集中させてその活動に取り組み、一段落ついたときに、その上にある真の目標を見失ってしまいがちだからだ。ひとまず置いた目標に実現に向かって精一杯努力しているうちに、その目標が最終目標であるかのように錯覚し、そこに近づくと、目標実現への達成感が得られるとともに、活動が終わってしまったのではないかと思ってしまうのである。つまり、その活動は、真の目標を達成するための手段にすぎなかったのだということを忘れてしまいがちなのである。


そうなると、だいぶ前に設定した「真の目標」を思い出すまでに時間がかかったりする。その場合、バーンアウトしてしまったり、自分を見失ってしまったりするので要注意だ。オリンピックでメダルを取った瞬間にバーンアウトしてしまう選手があるが、その選手はオリンピックのメダルが真の目標だったのだろうか。本当は、それは本人の人生における目標に近づくための手段にすぎないのではなかったのだろうか。