「書く力」は現代の錬金術

午堂(2010)は、書く力は、経験や情報という目に見えない素材をベースに価値を生み出す、現代の錬金術だと言う。書く力の元は、情報(知識・経験)のインプットと、それらを練る、再構成する、表現するというアウトプットだと言う。この2つをあわせて「知的生産力」と言う。これは情報を換金することと言い換えることもできる。「人を動かす」文章を書けるかどうかがポイントである。ビジネス書を例にとれば、良いビジネス書とは「読者の思考体系が変わり、読者を行動に駆り立てる本」「エンターテインメント性がある」「わかりやすい」の要素が含まれている。


つまるところ、文章を書く力とは「情報を編集する力」だと午堂は言う。われわれは、情報に触れれば好奇心が沸く。また情報に流されたり振り回されたりもする。トレンドとは、情報に流された人たちの集団行動の結果とも言える。午堂による知的生産力(情報編集力)を高める発想の方程式は、1)物事を抽象化する能力を鍛える、2)抽象と具体の行き来をする、3)エピソードで説得力を高める、4)問題提議+処方箋のセットで提示する、というものである。また、メタファー力(比喩力)、アナロジー力(類推力)なども大切だと言う。


同じ情報に触れながら、人と異なる切り口を生み出す感度も重要である。特別な情報で勝負するよりも、一般的な情報からでも、そこから何を見出すかが重要なのである。


文章力については、自分の中に「よい読者」を育み、自分の内面から出てきたものを、複数の視点から見つめ直すことが重要である。また、文章は、多めに書いて、そこから削って磨いてシャープにしていくのがよいと言う。表現を、結晶のごとくクリスタライズしていく。そうして筋肉質の文章を作っていく。読みやすいということも大切である。そして、自分で読んで感動する文章を書くことである。自分の心に響かない文章が、読者の心を響かせることはできない。さらに、以下の言葉を紹介している。

  • 頭で書いた文章は、読者の頭に届く。
  • 心で書いた文章は、読者の心に響く。
  • 魂で書いた文章は、読者の魂に響く。