文章力を鍛えるには

金田一(2007)は「絵筆のように言葉を使おう」という章の中で、文章力を鍛えるための有用なヒントを提供している。金田一によれば、文章で大切なのは「美しさ」よりも「正しさ」であり「事実と論理」だけで文章を組み立てていくことは、言語能力を磨くうえでは重要であるという。


ベタベタした甘ったるい文章が「美文」と言われることがあるが、しょせんはご飯のふりかけのようなもので、ベースとなるのは、正確無比な文章なのだという。


国語力(文章力)を鍛えるトレーニングとして金田一が提唱するのは「絵を言葉で書いてみる」ということだ。たとえば、ひまわりの絵を見ながら、

「大きく育った黄色いひまわりが咲いている。ギラギラ輝く太陽に照らされている。青々とした葉には、くっきりと葉脈が浮かんでいる。太い茎は、少々の風が吹いても折れそうにない」

といった感じで言葉にしていく。テーブルに置かれたコップを見て

「ガラス製の小さなコップがある。大きさはちょうど手のひらに収まる程度。容量にして180ccといったところ。使い古され、やや曇っている。曇りをよく見ると、それは小さなキズの集まりである」

とにかく目に見えるものを言葉に変換していく。そして大切なのは「自分の意見をいっさい入れない」。それが正確な描写につながるのである。それを誰かに読んでもらって絵に描き起こしてもらうとさらによしあしがわかるという。