発想力を高める方法

奥山(2019)は、クリエイティビティを発揮し、発想力を高める方法として、「自分の手で、目の前の紙に「絵」を描くこと」をお勧めするという。手で絵を描くうちに、ぼんやり頭に浮かんでいるだけだったアイデアが、次第に輪郭を帯びて、明確になってくることがあるという。すなわち、手を使って絵を描いて試行錯誤していくと、自分のアイデアが整理されて、予想すらしていなかった「偶然性のあるひらめき」を高確率で呼び込むこともできるようになるのだと奥山はいうのである。


ここで重要なのは、クリエイティブとは独創的だとか創造的だとかいうよりも、自分の意識や思考を前提にしつつ、さらにそれを超えたところで、偶然起きたことをつかまえる能力だと奥山が考えているということである。良いアイデアを得るには、自分の頭で思いついている範囲の思考を超えていく必要があるのだが、そのためには、手を動かしていくことが必要なのである。自分の本来の能力を超えて、潜在的なクリエイティビティを、偶然性を通して引き出すための最適なツールが必要であり、その1つが、自分の手で絵を描くということなのである。


実際、偶然はいろんなところで起きている。しかし、往々にして人はそれに気づかない。気づくためには、日ごろから問題意識をもって物事を観察しておくことを通じて、偶然をキャッチアップする準備をしておく必要があると奥山はいう。用意や準備がなければ偶然という幸運も訪れない。よって、アイデア出しとして絵を1万枚描くとか、文章を一万字書くとかすることで、時間をかけて経験によるロジックを意識的にも無意識的にも積み重ねる。そしてこれらをいったん「忘れる」。忘れたように見えても、頭のどこかで転がっているから、何かを見たり、聞いたりしたときに、偶然のようにひょっこりとよみがえってくるというのである。


そして、チームで動く際のイメージ共有にも、絵の力が威力を発揮すると奥山は説く。絵の強さは言葉の壁を超える「世界の共通言語」であることだとさえいう。