時間展開・相互作用・ダイナミクス

沼上(2009)は、読み応えのある経営戦略テキストの良書である。本書の最も特徴的な点は、副題にもあるように、「時間展開・相互作用・ダイナミクス」の強調と、それを理解するための「メカニズム解明法」の説明であろう。


つまり、人々の相互作用や、企業間の競争・協調を通じた相互作用が時間軸の中で展開されることで、業界構造や企業の経営資源がダイナミックに変化していく視点、そしてそれを盛り込んだ経営戦略論を強調している。こういった視点を取り入れるためには、思考方法として、時間展開が織り込まれた因果関係のストーリーを読み解く「メカニズム解明法」が必要なのである。これは、プレイヤーの相互作用が時間の流れの中で繰り広げられる様子を読み、それらがもたらす良循環・悪循環をも視野に収める思考法でもある。


沼上幹 2009「経営戦略の思考法」日本経済新聞出版社