原尻(2011)は、世界を変えるような優れたアウトプットを生み出すための「アイデア至上主義」の世界で結果を出し続けるために、継続してアイデアが生まれる仕組み(装置)の構築方法を提案している。それは、インプットの技術とアウトプットの技術から成り立つが、肝となるのは、「データベース思考」と「民際学的思考」だという。
「データベース思考」とは、生み出されたアイデアをデータベース化し、アウトプットに変換する仕組みである。古くは、京大式カードなどがあるが、原尻は、クラウドサービスの活用を説いている。現場に出向いたフィールドワークや二次資料の収集・分析によりさまざまなアイデアが浮かんだら、それらはアウトプットの「素材」となる。これらの素材を、うまく調理できるようなかたちで整理し保存するのである。あとは、必要なときに、さっと取り出し、いくつか組み合わせたりしてアウトプットを量産する。アウトプットへの構えを作り、データベースを整理してアウトプットへの準備や仕込みを念入りに行い、試行錯誤を行うことで、優れたアウトプットを生み出そうとするわけである。
「民際学的思考」とは、アイデアを量産し、膨らませる行動規範であるという。豊かさを実現するための<循環性の継続><多様性の展開><関係性の創出>がキーワードとなるが、インプットをアウトプットに変換し、そのアウトプットが次なるインプットにつながるというような循環を作り出すことによって、アイデアを継続的に発生させ、大きくしていく仕組みを指す。循環するアイデアのエコシステムである。この考え方を、自らのアイデア装置に組み込むことで、恒常的なアイデア発生を仕組み化することができるのだと説く。