デキル部下は上司のガイド役

一般的な上司と部下の関係というのは、上司が仕事の大きな構想を描き、計画を立てた上で部下にその実行を指示し、部下がそれを実施し結果を報告するというようなものである。つまり、上司が部下を動かして大きな仕事をするというのが教科書的な理解である。


しかし、優秀な部下は常に先読み、先回りして仕事をするので、まず上司が何を考え、どのような構想・計画で仕事を進めようとしているのかをあらかじめ十分に理解している。そうしたうえで、実際に仕事をするときに、上司が尋ねる前に先手を取って状況を報告し、これから起こるべき問題や課題を報告し、それに対してどう対処すればよいだろうかという提案も含めて上司に連絡する。上司が部下を動かしているのではなく、現場を熟知している部下が、上司の構想や希望を汲みいれつつ、上司を適切な方向にガイドするという、上司のガイド役になるのである。よって、上司は安心して部下に仕事を任せることができる。なおかつ、部下が常に先を読んで困難な問題がありそうなときは先回りして対処してくれるので、上司はそういった仕事もする必要がないので、もっと大局的な、戦略的な仕事に時間を費やすことができるのである。上司はより遠くまで先を見通して正しい方向性を示すことができるようになる。


ポイントとしては、できる部下は、上司が「あれどうなったかな」と思い始めたときあるいはその前に、きちんと状況を報告し今後の指針についても意見や提案を持ってくるガイド役であるということである。


デキナイ部下というのはその逆で、上司が「そろそろ状況を報告に来るかな」と思っていてもいっこうに連絡に来る兆しがない。心配になって上司のほうから「あれはどうなっているのだ」と聞くとはじめて報告してくる。しかも、仕事が常に後手後手にまわりがちなので上司が期待していたような成果をあげていない。しかも、状況が悪化してしまっていて時間的に間に合わなくなってしまっている場合もある。要するに、部下が先読みをして先手を打って問題を解決していく能力にかけることと、適切なタイムマネジメントができないがためにそうなってしまうのである。


こうなると上司は安心してその部下に仕事を任せられないことになる。最低限、指示したことはやってはくれるのだろうが、それ以上の「気の利いた」仕事はしてくれないので、常に上司自らが状況判断をし、起こりそうな問題を察知し、その対策まで含めたレールを敷いてあげないといけない。部下はそのレールを指示どうりに走ることしかできないのだから。そうすると、上司がいちばん現場に気を使い、現場に近い仕事をたくさんしなければならなくなる。よって、上司の本来の業務である大きな構想や戦略を作っていく仕事ができなくなってしまうのである。よって、上司は、先を見通した構想を描くことができず、目の前のささいなことに忙殺されるため、構想や戦略も短視眼的なもの陥ってしまう。


部下は上司の手足ではなく、それ以上の存在である。むしろ、上司のブレインの代わりを部下が行なうべきである。デキル部下は、上司が大まかな構想を示しただけで、自分の頭で最善策を考えて実行してくれる。しかし、デキナイ部下の場合は、上司の手足としか使うことができないので、仕事の具体的なやり方まですべて上司が考えた上で、事細かな指示を上司がしなければならないのである。