論理的思考力を磨くためのテキスト

野矢(2006)の「新版 論理トレーニング」は、論理を狭い意味での「演繹」に限定せず、言葉と言葉の関係であると広く捉える。そして、論理力を、文や主張のまとまりを、矛盾していないのみならず、終始一貫しており、有機的に組み立てることができる力であるととらえ、論理力を鍛えるための練習問題を多くとりあげている。本書の構成は(1)「接続の論理」(2)「論証」(3)「演繹」(4)「議論を作る」となっている。


(1)「接続の論理」では、接続関係に注意しながら議論の流れをつかむ練習を行う。論理にとって必要な接続関係(多くの場合接続詞が用いられる)には、「解説」「根拠」「例示」「付加」「転換」「補足」があることを紹介し、さらに、指示表現などを用いて行われる議論の接続構造を分析する方法を紹介する。そして、議論の基本は、必要に応じて解説や根拠を伴った主張を、付加か転換でつなげていくことであると説く。


(2)「論証」では、「なぜ」に対して「なぜなら」と答える根拠についての論証構造をとらえる練習を行う。論証図を用いて論証構造を分析する方法を示す。そして、論証には「演繹」「推測」「価値評価」といった異なるタイプがあり、それぞれについての論証評価の方法を説明する。


(3)「演繹」では、論証の基本技術としての演繹を正確に使いこなす技術を練習する。否定の方法、逆、裏、対偶などの条件構造の説明、そして消去法や背理法を含む推論の技術についての解説をしている。


(4)「議論を作る」では、これまでの内容をベースに、議論を作る練習をする。批判へのまなざしや論文の書き方を解説している。


また、このテキストの練習問題編でもある「論理トレーニング101題」もある。