http://www2.chuo-u.ac.jp/econ/anniversary100/lecture_summary_03_04.html
アメリカと日本の社会とがどう違うのかということですけれども、一言で言いますと、日本が平等・同一を前提とした社会で、平等ということが社会正義であるのに対し、アメリカは違いを前提とした社会です。つまり平等ではありません。しかし、競争を正しくやるというフェアネス、公正・公平の世界でありまして、公正・公平というのが社会正義であります。
・・・一方、日本はどうかというと、どこの大学でも、どんな大学でも、どんな科目でも、これが現在の現実ですが、例えば来年キヤノンに皆さんが来るとします。そうすると、どの学部であろうが、勉強した人もしない人も全部給料は同じです。これが日本では当たり前です。しかし、これはアメリカ的に考えると、実に奇妙なのですね。じゃ、今まで勉強した人は、しない人と同じ給料をキヤノンに来て、スタートのときにもらうということは、努力した人は、それまでの人生を否定されていることになる。これはアメリカ人には受け入れがたいことです。しかし、日本はそれが当たり前で「それがどうした」という社会であります。
アメリカの会社だと、すぐ人がどんどん替わるというふうに思いますが、アメリカにはいろいろな会社がありまして、一流会社はそういうふうに入れ替えられた結果、なかなか人が動かないという現象があります。つまり日本のように制度としての終身雇用ではなくて、結果としての終身雇用が行われています。
アメリカは流動性という社会の中で入れ替えによって強化する。日本は終身雇用の中で教育によって強化する。各々の欠陥は各々の制度で補っていく、こういったことが私は正しい経営の仕方だと思います。その社会の違いを無視して、日本でアメリカ流をやろうとしても、根づくものではありませんし、また、日本流をアメリカでやっても、根づくものではないと私は思います。