これからの企業内労使関係

http://db.jil.go.jp/cgi-bin/jsk012?smode=zendsp&detail=E2000080002&displayflg=1&pos=196421&num=23127

組合・経営関係を基軸とする集団的労使関係から、会社と個々の社員の間の個別的雇用関係へのシフトが進み、これと並行して、個別苦情処理の必要性が高まる、という予想を多くの企業が抱いていることがみてとれる。一方、労働者重役制による労働者参加の強化や、管理職までも含めた組合員範囲の拡大といった労働組合の対応は、実現しそうにないと思われている。
・・・雇用関係の個別化→個別苦情処理の必要という連鎖を起点に、労使関係悪化の懸念がいだかれていることが分かる。


労働組合の希薄化」は、労使関係のパフォーマンスを相対的に悪化させる要因になると思われるけれども、「組合の発言の活発化」を通じて問題が解決され、労使関係のパフォーマンスがあがるというシナリオは、少なくとも本調査のデータからは浮かび上がってこない。個別的労使関係の深化・拡大の中で、労働組合の対応は非常に難しい局面に入っていくことが示唆される。
・・・会社と社員の個別的な雇用関係の比重が高まるにしても、有組合企業の場合は、一方で組合との集団的労使関係を持っていることから、雇用関係の個別化の進展に対する否定的な見解の比重がやや多くなり、また個別的労使関係と集団的労使関係の調和という文脈の中で、「個別苦情処理の必要」もより強く意識されているといえるかもしれない。
・・・社内での発言の活発化や非正社員利益への配慮など、労働組合の変化への対応も、ある程度予想はされようが、にもかかわらず労働組合の後退に歯止めがかけられるほど事態は甘くない、というのが有組合企業の大方の見方とも解釈される。これは、日本の企業別組合にとって深刻な警告として受け止められるべき結果といえよう。


労使関係のあり方は、労働組合の希薄化が進む中で、終身雇用のタイプを問わず、個別企業中心の労使関係が続くものとみられる。
 これまでの変化は「否定型」が中心であったが、今後の変化は企業の経営状況が最も悪い「見直し型」で多く進むだろうとはすでにみたとおりである。しかし、「否定型」企業と「見直し型」企業は合計して全体の約2割に過ぎない。そのため、こうした変化が日本の企業経営に大きな流れを形成しているとは言い難い。その意味で、上記の変化は限定的であり、従来からの企業経営や雇用慣行は新世紀においても、当分の間、主流でありつづけるとみられる。