TEDに学ぶプレゼン術

ドレバン(2013)は、TEDにおける優れたプレゼンテーションを題材にして、聴衆の心を動かすスピーチの秘訣を解説している。その秘訣を一言でいえば、「今までの古い意識が新しい考え方へと変わっているような、あるいは何か行動を起こす意欲が沸いてくるような、そんなインスピレーションの種を1つ撒いておく」ということだという。


スピーチのトピックを選ぶ最善の方法は、まず聴衆に伝えたいメッセージをひとつ選び、さらにそのメッセージに情緒的な深みを沿える何か目をみはるような経験はないかと頭の中を捜しまわることだという。そのためには「核となるアイデア」が必要で、核となるアイデアが見つかったら、こんどはストーリーと事実を積み重ねながら、聴衆を主体にしたトークを組み立てることである。自分以外の誰かをヒーローにすることが、人の心を動かすストーリー作りのコツだというわけである。


そして、アイデアを伝わりやすくするには、3語から12語の印象的なキャッチフレーズに要約するのが大切で、聴き手の行動を誘発するような、リズムのいいキャッチフレーズが良い。そして、プレゼンではキャッチフレーズを最低でも3回は繰り返すことだとドレバンはいう。


ドレバンによれば、オープニングで着実に成功をもたらす手法は、個人にまつわるパーソナルストーリーを語ることである。それは純粋に自分のことであり、スピーチのコアメッセージと直接関係している必要がある。そして、ストーリーは聴き手の感情をゆさぶるもの、五感に訴えるもの、会話をふんだんに盛り込んだものであることが大切だという。インパクトのある質問で聴衆の心をつかみたい場合には、なぜ(WHY)やどうすれば(HOW)から始まる質問で、聴衆の気を引くのも有効だという。


特に冒頭部分では、自分のスピーチを聴くメリットを聴衆に考えてもらうよう暗に導き、ポストオープニングでは、スピーチを聴くことで聴衆は何を得られるのか、そしてそれにはどれくらい時間がかかるのかを明確に示す部分を入れることをドレバンは勧める。


スピーチの結末は、中心テーマと結びついていなければならないとドレバンはいう。例えば、聴衆が正しい方向に動きだせるように、今日にもできる簡単な次のステップを示してあげる。聴衆が最後に抱くであろう疑問には、必ず言及する。終わりが近いことを明確に知らせ、締めくくるわけである。