講演・スピーチの定番の出だし

野口(2013)は、「超」説得法と題して、一撃で相手を仕留める方法を論じているが、日本の講演やスピーチにかんしては、平凡な出だしで儀礼的にやるほうがよいという。実は、洋の東西を問わず、フォーマルな演説の最初は形式的なのだという。野口が紹介する具体的な出だしは以下のとおりである。

  1. 皆さんこんにちは。○○です
  2. 話す機会をいただき、光栄です
  3. 主催者へ礼。幹事へのねぎらい
  4. 「この町には特別の関心がある」云々
  5. この話がどのような効用を持つか
  6. 全体の見取り図。「話したいことは3つある」

上記のような平凡な出だしをしながら、聴衆はどういう人たちか、私の話に興味を持って期待しているのか、単に無関心なのかなど、その場の雰囲気を掴むべきだと野口は説明する。ただし、講演やスピーチの最後を印象的に締めくくるのは難しいという。儀礼的には「ご清聴ありがとうございました」「皆様のご発展を祈念します」などがあるが、「最後に一言申し上げて、私の話を終わりにいたします」といって、何か印象的なことを話したいという。「現状は厳しいが、発想を変えれば今まで見えてこなかったものが見えてくる」や、「皆と同じことをやっていてはいけません」「この地方の特性を活かして発展させていただきたい」などの方向付けもあると論じる。


入社式の社長訓示などでは「わが社の将来は、あなたがたの双肩にかかっている」というのが便利なフレーズであり、「私はあなた方と同じ側にいる」「未来はあなた方の側にある」というメッセージもある。さまざまな場合に便利なのは「いろいろあったが、これからが楽しいぞ」「これまで大変だったが、将来には夢がある」というようなものだと野口はいう。