瀧本(2011)は、投資家とは、「資本を所有して、それを自分のために適切な機会に投資することができる人」だと言うが、ここで大切なのは、資本=マネーではないということだ。自分自身の知識やスキルといった人的資本や、人脈などのソーシャル資本も資本である。それに関連して瀧本は、「みんなの知らない情報をもとに投資すれば絶対に儲かる」ことを利用した「インサイダー取引」は、法的に厳しく禁止されているが、それを合法的に行う方法があると言う。
つまり、「株式投資ではない形で、インサイダー取引をすればよい」というのである。投資とはお金を投資することだけではなく、自分の労働力や時間、人間関係を投資することでもある。だから「この会社は絶対に伸びるに違いない」と思えるインサイダー情報を入手したならば、自分の持っている人脈や知識、スキルなどの「人的資産」を投資すればよいということになる。いちばん単純なのはその会社の社員になることだが、単なる一社員ではなく、会社が大きくなったときにそれに応じて自分のリターンも大きくなるようにすることが重要である。
本物の資本主義が幅を利かせるこれからの時代で生き残っていくのは、個人も会社も、そうした「投資」をきちんと行っていけるかどうかにかかっていると瀧本は指摘するのである。