非情で残酷な日本社会を生き抜くための武器

瀧本(2011)は、自らが京大にて起業論を教えつつ、これからの若者がある意味非情で残酷な「本物の資本主義」社会で生き抜いていくために必要な考え方について論じている。その中で、これからのビジネスパーソンとして生き残る4つのタイプを紹介している。


1つ目は「マーケター」である。これは「顧客の需要を満たすことのできる人」と定義できる。マーケターは自分自身で何か画期的なアイデアを持っている必要はない。むしろ、世の中で新たに始まりつつあるかすかな動きを感じ取り、その理由を考え、様々な要素を組み合わせて人々が共感できるストーリーやブランドといった違いを作り出し、商品にそれらを載せて、もっとも適切な市場で売ることができる人である。


2つ目は「イノベーター」である。全く新しい仕組みを創造できる人である。イノベーションといっても、まったく新しい製品を作る必要はなく、すでにあるものの組み合わせを考えたり、見方を変えることによって起こすことが可能である。したがって、いろいろな専門技術を知ってその組み合わせを考えられる人が向いている。「常識」とされていることに対して、ことごとく反対のことを検討するという発想もイノベーターに向いている。


3つ目は「リーダー」である。とりわけ、優秀な人材ではなく「駄馬」を使いこなすことができるリーダーが望ましい。また、起業したりして事業を成功にまで持っていくためには、尋常でないパワーが必要なることから、リーダーは「クレイジー」である必要もある。実際は、何らかのコンプレックス(劣等感)を原動力にしているリーダーは多いと瀧本は言う。


4つ目は「投資家」である。資本を所有して、それを自分のために適切な機会に投資することができる人である。資本主義では、すべての人は究極的には投資家になるか、投資家に雇われるか、どちらかしかない。それならば、自分が投資家として積極的にこの資本主義に参加し、みずから投資家として振る舞う。そのさいには、世の中のトレンドとサイクルを見極め、投資機会を増やし、リスクが取れる範囲で「ハイリスク・ハイリターン」の選択肢をたくさん選ぶことが大切だと瀧本は指摘する。