情報戦を勝ち抜く謀略技術

福田(2007)は、情報戦を専門的に扱った中国兵法の「間書」に基づき、私利私欲のためではなく、自分も汚れる覚悟で公益を果たすために「戦わずして勝つ」ための手段として、情報戦(スパイ活動)の技術を紹介している。


まず、情報戦(スパイ活動)とは、情報集中と情報操作という2つの柱で支えられた活動である。すなわち、情報を収集することによって先手必勝を実現すること、そして情報を操作することによって有利な状況を作り出すことを目指すわけである。


そして、スパイ活動には「孫子」でも述べられている5つの種類(5間)があると解説する。

  • 郷間:敵の身近にいる人間(敵国の住民など)を利用するスパイ活動
  • 内間:敵の内部にいる人間(敵国の役人など)を利用するスパイ活動
  • 反間:敵のスパイを利用するスパイ活動
  • 死間:だれかを犠牲にしてスパイ活動を行うもの
  • 生間:生還を前提にしてスパイ活動を行うもの


これらを現代風もしくはビジネス場面になぞらえるならば、郷間は、ライバル(会社)に出入りしている人を見つけ、それとなくライバルの様子を聞いてみるような活動である。内間は、ライバル(会社)において不遇な人(よって優遇されている人や会社に不満がある人)をうまく誘って情報を仕入れる活動である。反間は、ライバル会社からこちらの情報を仕入れにきたと思われる人に対して、偽りの情報を流してライバルの動きを操作しようとするような活動である。死間は、犠牲を出すことで目的を遂げる活動であるから、普段自己犠牲を示して周りの信頼を勝ち取るようなものである。生間は、知恵を駆使して失敗しないで情報を持ち帰ってこれるようなスパイ活動といえる。


また、福田は、スパイ活動を行うさいに重要なのは「秘密」と「厚遇」だと説明する。秘密はどこから漏れるかわからない。よって慎重に慎重を期さないとスパイ活動は失敗する。「厚遇」は相手の心をつかみ、信頼を獲得できるため、有利なスパイ活動を行うポイントとなる。


そして、(1)重要な人は誘惑する、(2)不遇な人は買収する、(3)いばる人はおだてる、(4)使いの人は盗聴する、という方法も紹介している。たとえば、トップに大事にされている有力者の欲を満たしてあげることで誘惑する、落ち目の人に恩を売って感謝してもらう、いばっている人に対して「よいしょ」することで調子に乗っていろいろとしゃべってもらる、向こうからの使者をすかしたりおどしたりすることでこちらのスパイ活動に利用したりするわけである。