勝負を通じて自分を成長させる

林(2006)は、人間の脳の知見から、記憶力を高めるには「心」をうまく使うことを薦める。楽しく記憶につながっている心をうまく働かせる。具体的には、「人の話はできるだけ興味を持って、感動して聞くようにする」「覚える内容にも興味を持ち、好きになるようにする」「長時間の学習はできるだけ避け、時間を限定して集中して覚える」「覚える内容を、自分の得意なものと関連付ける」「声に出して覚える」「覚える内容について、自分で独自に考え、勉強する」「覚えたものは、その日のうちに一度、目を閉じて声に出してみる」。この7つの作業を行えば、いったん忘れたものもイメージ記憶として引き出しやすくなるという。


また林は、スポーツの重要性も以下のように説いている。スポーツはライバルと競い合うなかで「自分を高める機会を与えてくれたライバルを尊敬できる人間性を育む」「何事にも手を抜かない努力によって、能力を高めていく習慣を獲得する」「困難を乗り越えるとすばらしい勝利の幸福感を味わうことができるという体験によって、達成率を高める才能を育てる」などの人間的成長が可能になる。


私たちには、人間の尊重を大切にし、人を愛し、共存しようとする心がそなわっている。人間の脳は、どんなに意見や考えや立場が違っていても、競い合った相手でも、お互いを認め、ともに生きることを望んでいる。よって、スポーツによって打ち負かした相手に対しても、自分達に勝利という感動を与え、切磋琢磨する気持ちを与えて高めてくれた人であると考えることができる。自分が負けたときも、負かされた相手を認め、尊敬する心を持つことによって、自分も一回り大きく成長することができる。負けた悔しさを大切にすることによって、自分の足りない点を学び、そこからさらに努力というエネルギーをもらい、人はさらに成長するのだという。つまり、勝負とは、それを通して相手を尊重することを学び、自分が成長するものなのである。