評論文の構造

石原(2008)によると、中学入試国語では、評論文の逆説的なところが好んで使われる。つまり、評論文の特徴でもある、どこか刺激的で、「ふつう」のことがわかっている人が「ふつう」でないことを書いた文章から出題しやすいということである。そもそも評論では、世間でみんなが思っていることを言ったのでは面白くないので、ちょっとひねって、世間とは違ったことを言うものなのである。よって、私たちが「ふつう」だと思っていることに疑問を投げかける文章、ちょっとした飛躍がある文章、適度な悪文である文章が、設問を作りやすく、出題されやすい。


また、評論は、何かと何かを対比させながら論を展開していくことが多い。つまり、評論文では、対立する2つの言葉がセットになって論が展開されることが多い。この対比・対立に注目し、筆者がどちらを支持しているのかを理解するのが得策である。この2つの対立する言葉を使って「自然と人間」といったように、入試評論文にタイトルをつけてみるとよいだろう。


石原(2008)は、入試国語の評論を読むさいの「お約束」についてもいくつか紹介している。

  • 抜き出し設問(空欄補充問題)があるときは、同じことを繰り返し言い換えている文章である場合が多いので、言い換えながら繰り返されている表現に注目するとよい。
  • 傍線部の答えは、次の傍線部までの間にあることが多い。
  • 日本を題材とする比較文化論的な評論では、日本人像として、協調性があって、時間に正確で、理不尽なルールや法律を守り、お上に弱いというものがお約束である。
  • 何かと何かを比べるのが評論文の基本。同じ内容のものについての評論でも、何と比べるのかによって評価が正反対になったりするので注意する。例えば上記の日本人像も、何と比較するか(比べ方)で評価が正反対になる。何と比べているのかをきちんと押さえる。
  • エス・ノー問題(日本語のはい、いいえとの対比)は、比較文化論では定番。
  • 最近の文明論や文化論では、1つの基準を設けてどちらが優れているかといった論調よりも、そもそも基準が違う、いや比べる基準など設けようもない、単に違うのだ、といった論調(違いを違いとしてお互いに尊重しあおうという教訓)が増えている。
  • 入試出題文では、お説教くさい言葉が好まれる。