公正研究

http://www.okayama-u.ac.jp/user/hasep/yh-seminar/2005b/Nabeta_51003.htm
今在慶一朗(2005)
公正研究

相対的剥奪理論 客観的な豊かさと主観的な満足感の不一致を説明しようとする理論が相対的剥奪理論であり、相対的剥奪理論に関する研究は多い。例えば、クロスビィ(Crosby, 1982)の研究では勤労女性に対する調査を行い、男性との賃金格差に関する不満の強さについて測定した。(当時のアメリカ合衆国では同じ職務に従事していても女性の賃金が低く設定されていることが多かった)。経済学的な視点から考えると、低い賃金を支給されている女性ほど賃金格差に対する不満が強いと予想できるが、実際の結果は反対で、高い賃金をもらっている女性ほど男性との格差に強い不満を感じていることが示された。そこでクロスビィは、比較的高い賃金が保証されている女性の場合社会的に権威の高い職業についていることが多く、職場には男性が多いから男性を比較対象とし、賃金の格差を常に意識させられるが、比較的安い賃金で働いている女性の場合、同僚がほとんど女性であるため差別的な扱いを受けていると感じにくいのであると説明した。このように、相対剥奪理論では、人々が客観的な報酬の量によってではなく、比較対象となる他者との相対的な格差によって満足感を変化させられていると仮定されている。ところで、比較対象にはいくつかあり、1つは同じ境遇にいる他者、もう1つは頻繁に接触する他者である。また、現実の他者だけでなく、過去や反実仮想における自己も比較対象となることがある。