企業進化と経路依存性


日本の総合商社の存在は、経路依存性で説明できるのではないだろうか。
戦後の復興期には、加工貿易国日本にとって、総合商社は必要不可欠に近い存在だったかもしれない。しかし、しだいに日本経済も変化し、総合商社(総合卸)が必ずしも必要でなくなるのではないかという時代的変化において、総合商社は生き残るために独自の進化をとげ、現在のような姿になっているのだろう。つまり、昔のような総合商社というのが現在必要ないとするならば、総合商社は現在存在している必然性はないのだが、商社そのものが、歴史的経緯とともに変化・発展をとげて、現代の経済に必要な機能を次々と獲得していった結果として、現在なくてはならない業態としての地位を獲得できているのだと理解できるのである。
そうだとすれば、もし日本が貿易立国としてスタートしていなければ、現在においては総合商社という業態は存在しないかもしれない。現在における総合商社と同じような「機能」は経済のどこかに存在しているとしても、それは別の業態であったり、複数の業界でそういった機能をシェアされていたり、と、別のかたちで機能が成立しているような気がする。現在における最適解はじつはいくつも存在し、現在の姿は、初期値(戦後復興期の状態)によって規定されているのだろう。