設計思想と人的資源管理

設計思想(アーキテクチャ)を、人的資源管理に適用するとどのようなことが言えるだろうか。つまり、人的資源設計(ヒューマン・リソースアーキテクチャ)をどう捉えるべきであろうか。


「ものづくり」は「ひとづくり」であり、企業は製品やサービスのみならず、それをうみだす「ひと」を作っていると解釈することもできる。このように、企業をものづくり的視点から眺めるならば、従業員ひとりひとりというよりも、「人的資源」というかたまりで捉える場合、日本の強みはどこにあるだろうか。


東京大学の藤本教授によると、設計思想には、「すりあわせ型」(特殊な設計を最適設計をしていくもので日本の得意分野)と「くみ合わせ型(モジュラー型)」(すでに出来上がったものをくみ合わせると製品になるタイプで、構想力とかシステム能力が強いアメリカや中国の得意分野)がある。


とすると、日本の強みは「すりあわせ型」の人的資源設計思想ということになろう。「すりあわせ型」とは、独自に部品を設計し、しかも各部品の設計を調整して全体を生産しなければならない分野である。すりあわせとは、この調整を指す。つまり、協調性を発揮し、木目細やかな対応が求められる分野である。企業の人的資源も、すりあわせによってつくっていくやり方があるということである。


一方、モジュラー型(組合せ型)というのは、レゴブロックのようにそれぞれが独立した機能と標準インターフェースを持ち、それを単純に組み合わせ、寄せ集めればまともな製品ができてしまうというアーキテクチャである。人的資源設計にあてはめるならば、米国がそのようなやり方に強いと考えられる。


これも藤本教授によるものであるが、ものづくりとは「設計情報の創造と転写」であるといえる。人的資源管理にあてはめるならば、設計情報の創造というのが、人的資源システムの設計であり、転写というのが、人的資源システムの運用である。長期雇用、長期取引、相互調整、チームーワークといった戦後日本企業のもっていた組織の能力に対応しているのは、すりあわせ型の人的資源管理システムということになるわけだ。


続く

参考サイト
http://www.makuhari.or.jp/urbanist/2003/03_05.html