研究分野の紹介

個人と環境のフィットに関する研究

働く個人と、その個人が置かれる環境がフィットしていることは、個人のキャリアや業績にとっても、企業や組織の業績や健全性にとっても重要なことだと考えられます。個人と環境のフィットといっても、個人と担当職務とのフィット、個人と所属する集団(部署やチーム)とのフィット、個人と組織全体(組織文化など)とのフィット、個人と職業やキャリアとのフィットなど、さまざまなレベルや次元があります。こういった個人と環境の多次元的なフィットのダイナミックな理解を研究分野の1つとしています。

進行中のプロジェクト

採用意思決定における、志願者と職務のフィットと志願者と組織のフィットの相対的重要性についての実証研究

  • 実験的手法を使って、異なる就業形態ごとに、相対的重要度を検討。

個人とチームのフィットにおけるダイナミックなプロセス理論

  • とりわけ初期状態でチームにあまりフィットしていないメンバーを投入したときの反応と、予測される結果についての理論構築。実証研究は検討中。
現在作成中・投稿中の論文
  • A dynamic model of person-group fit: Putting a misfit newcomer.
  • Work status, job type, and fit in selection decisions (with V. L. Huber).

戦略的人的資源管理の研究

企業の人事システム全体が、どのような因果関係プロセスを経て、企業業績に結びつくのか、その際に、どのような環境条件や戦略条件などと人事システムとの適合性が問題となるのか、国や地域の文脈や制度はそれらのプロセスにどのような影響を及ぼすのか、などについての理論的、実証的研究をすすめています。

進行中のプロジェクト

日本という文脈において戦略的人的資源管理研究を行うことの意義についての理論論文の作成
製造業を対象とするサーベイ調査を企画中(共同研究)

刊行された論文
  • 関係性重視の人的資源管理に向けた理論的考察 『ビジネス・インサイト』第9巻3号 pp. 86-98. 2001年
現在作成中・投稿中の論文
  • Predicting future performance through strategic human practices in Japanese firms: Do past and concurrent competitive positions matter?(with N. Takeuchi, T. Takeuchi & S. Toba). Under review at Asia Academy of Management Conference.
  • Strategic Human Resource Management Research in the Japanese Context: Unique Opportunities for Theory Advancement (with N. Takeuchi, T. Takeuchi & S. Toba). Under review at Asia Academy of Management Conference.

組織的公正に関する研究

組織的公正に関する研究は膨大かつ多岐にわたりますが、その中でも、集合的公正概念の研究と、戦略的意思決定と公正についての研究をすすめています。

進行中のプロジェクト

集合的公正(集団やチーム全体がどう扱われているか)の知覚の規定要因と、そういった知覚がもたらす結果についての実証研究(共同研究)

  • 学部生を対象に、実験的操作を含めたアンケート調査を実施。

主にトップマネジメントによる戦略的意思決定における公平知覚にかんする理論を構想中。

刊行された論文
  • Collective justice perceptions in group-oriented cultures: Proposal of a new construct. The Japanese Journal of Administrative Science(with Yoichiro Hayashi). Forthcoming, 2006.
現在作成中・投稿中の論文
  • Linking justice, performance and citizenship via leader-member exchange (with J. Burton & C. Sablynski). Revision requested for Journal of Business and Psychology.
  • 新たに実証論文を作成予定

新規学卒者の就職活動における意思決定プロセスについての研究

大学卒を中心とする新規学卒者が、就職活動における企業選びのさい、どのような要因を重視して、どのような意思決定プロセスで就職活動を行うのかについては、いくつかの大規模なアンケート調査が行われていますが、アンケート調査では、表層的な部分のみの理解にとどまってしまいます。そこで、実験的手法などを活用しながら、新規学卒者の企業選びにおける意思決定プロセスを理解する研究を行っています。

多様な就業形態を含む職場のマネジメントに関する研究(科研費・若手B)

正規雇用やプロフェッショナルなどを含む、さまざまな就業形態の人々が共同で仕事をする状況が必要不可欠となるなか、それぞれの就業形態で働く人々の態度や行動の特徴を調査し、それらを通じて、多様な就業形態を含む職場のマネジメントに対する示唆を導き出そうと考えています。

外資系企業のトップマネジメントの採用・選別についての研究(共同研究)

共同研究として、外資系企業が日本における拠点のトップを、本国や第3国からの従業員で埋めるのか、現地の日本人にやらせるのかについて、それを規定する要因や、拠点の業績に与える影響などについて調査しています。

流れのマネジメントに関する研究

実践の場面において感じる流れの感覚を、理論的に表現するための研究を行っています。そうすることにより、すぐれた実践家がどのようにして流れをつかんだり操ったりしているのか、どうすればそれを習得できるのかなどについての理解を深めるための研究をしています。

現在作成中・投稿中の論文
  • キャリアにおける「飛躍」―― 上昇気流に乗るという視点からの試論
  • 流れの行動モデルとフロー理論との比較検討

経営学方法論

伝統的な科学的手法では調査・分析が難しいが、経営やマネジメントの実践には重要であると思われるリサーチトピックについて調査・研究していくためにはどのような代替的な方法論が可能かどうかについての研究を行っています。また、伝統的な科学的手法においても、実験的方法などにおいてまだわが国でなじみの浅い手法についての紹介なども行っています。