ジャネーの法則・人生の時間のパラドクス

人生は砂時計のようなものだと言われる。若い頃は、残された時間はたっぷりあるので、自分の人生が永遠に続くかのような錯覚を感じるものだが、年を取れば、残された時間が少なくなってきていることをひしひしと感じるのであろう。


飯塚(2008)は、人間が主観的に認識する時間の長さは、年齢の逆数に比例(つまり年齢に反比例する)とする「ジャネーの法則」を紹介している。また、フロー状態のもとでは、時間は一瞬のうちに過ぎるように感じられるが、退屈な時間は長く感じることから、「一瞬」のように感じられる時間をできるだけ増やすことで、人生は満ち足りたものになるという。本人も言うように、充実した時間ほど短く感じられるのだから、ある意味パラドクスでもある。最も充実した人生とは、一瞬で終わってしまうものなのだ。日清食品安藤百福氏の本に「駆け抜けた人生、食いなし」という見出しがあったが、まさに充実した人生は「駆け抜ける」ものなのであろう。


また飯塚(2008)は、「私という人生は、職業によって生かされている。働くことを抜きにした人生など、あり得ない。」と、語っており、さらに「人資豊燃」の精神という言葉によって、経営者の仕事として、「人」と「資本」を豊かに燃え上がらせることの重要性を説いている。それこそが、人々にとっての豊かな人生を実現させることになるのだろう。

還暦の私も、やはり人生は生老病死愛別離苦などの四苦八苦に満ちていると実感する。悲しみや苦しみ、そしてまた退屈も思い切り満載だ。しかしそれを超えて、深い喜びに満ちたキラキラ輝くひと時がたくさんちりばめられているということもまた強い実感である。
残念ながら、楽しくて嬉しいだけの生き方なぞは、原理的にも存在しない。実はむしろ、深い喜びのために苦しみは必須の存在なのである(飯塚 2008:238)。