会社員という職業

今の時代では否定されやすいが、昔は「会社員」という職業があった。その職業を多少卑下して「サラリーマン」という場合もある。どういう職業かというと「会社が行っている業務の一部を担当する」という職業である。


「会社員というのはは職業ではないから、学生は就職ではなく就社をしていく」という言い方もされてきたが、それは、職業の捉え方については一面的な理解しかしていない。


会社員を職業だというのに違和感を感じるのは欧米の発想で、欧米では、全体は部分を集めて作られるという発想をするから、会社というのは、個々の職業を束ねたものにすぎない。だから、その元となる「職業」に人々が就くのだと考える。会社は職業に分解できるから、同じ職業同士ならば、会社を変わることも容易である。


しかし、日本では全体から出発し、全体は必ずしも部分に分けられるわけではないという見方をしてきたから、会社は単に職業の集まりではない。会社が行う業務を、会社員たちが手分けして行うという発想だ。どのように手分けして行うかは、そのときにもっとも効率よくできるように仕事を割当てるということだから、職業というようなかたちで同じ仕事が束ねられ固定しているわけではない。状況によって行う仕事の割り当てを柔軟に変化させていくわけであるし、それができるのが「会社員」なのだ。だから、会社によって仕事を手分けするノウハウは異なるので、用意に会社を移ることができない。移ったとしても直ぐに移籍先の会社のノウハウを学んで柔軟に動けるようにはならないのである。