技術的合理性とプロフェッショナル


プロフェッショナルという言葉は、語源からして「神の宣託(profess)」を受けたものという意味を持っている。神の仕事を代行し、神の意志を遂行することを使命としていた。


近代においては「神の宣託」は「技術的合理性」に置き換えられた。つまり、実証的な科学を基本として形成された科学技術の実践への合理的な適用を職業とするものをプロフェッショナルと呼ぶということになる。


技術的合理性を基本原理とする近代のプロフェッショナルは、実証主義における厳密性と基礎と応用との階層性によって、権威主義官僚主義を形成してきた。つまり、学問にも階層性を作り、最も基礎的かつ厳密な学問に知的権威を与え(医療でいえば基礎医学)、それに従属する形で応用分野が配置され(医療でいれば応用医学)、それに従属するかたちで実践的分野(医療でいえば臨床医学)が配置されるようになった。


プロフェッショナルの間にも階層関係が形成され、基礎科学と応用技術の知的体型が最も整備されたプロフェッショナルが権威を持ち(医者や弁護士)、基礎科学や応用技術を厳密化することが困難な複雑な実践を伴うプロフェッショナル(福祉士や教師)は地位も待遇も低く扱われてきた。


ところが、技術的合理性を固守し、専門分化した役割に自己の責任を限定するプロフェッショナルは、クライアントが苦闘している泥沼を山の頂上から見下ろす特権的な存在にすぎないのである。

引用

佐藤学「訳者序文」ドナルド・ショーン著『専門家の知恵』ゆみる出版 2001年