社会的アイデンティティ

社会的アイデンティティの規定因における文化と集団サイズの影響

http://lynx.let.hokudai.ac.jp/lab/papers/thesis/2000/kunizuka.html

社会的アイデンティティに関しては、社会的アイデンティティ理論/自己カテゴリー化理論(以下よりSIT/SCTとする)の主張する内容が広く採用されてきた。これらの理論によると、人は自分と自分の所属する内集団を同一視し、その内集団を肯定的に評価することによって、自己概念の一部となる社会的アイデンティティを得るという。しかし、自己=集団と捉える現象が東アジア人には見られないことがいくつかの研究において示唆されている。また他のいくつかの研究では、東アジア人はむしろ集団内文脈に注意を払っていることがわかっている。
・・・欧米人は自己=集団と捉える自己カテゴリー化プロセスを経て、一方、東アジア人は集団を対人関係の網の目状のものが存在すると知覚するネットワークプロセスを経て、社会的アイデンティティが規定されていると予測される。・・・サイズの大きい集団では自己カテゴリー化プロセスを経て、一方サイズの小さい集団ではネットワークプロセスを経て、社会的アイデンティティが規定されると予測した。

集団間競争の認知が集団内協力に与える影響の実験的検討

http://lynx.let.hokudai.ac.jp/lab/papers/masters_thesis/2003/yokota.html

本研究の目的は、集団間競争の認知が人々の内集団協力に与える影響を実験的に検討することである。
・・・集団間競争の認知が人々の内集団協力にもたらす効果は、現実的葛藤理論、社会的アイデンティティ理論、合理的選択理論により予測が可能である。これらの理論から説明される集団間競争の認知の効果は、社会的アイデンティティの相対的優位性への脅威、集団間の差異性と集団内の類似性の強調効果、そして協力行動が非協力行動の利得を上回る可能性が存在するステップレベル型の利得構造への変化である。これらの要素は、人々の内集団協力行動を生起・促進させ、内・外集団間の差の最大化動機、内集団アイデンティティの程度を高揚させることが予測される。
・・・集団間競争の認知は、内集団協力行動の生起・促進、そして内外集団間の差の最大化動機に基づいた協力行動の生起を促すことが示された。本研究では、集団間競争の認知により発動する内集団協力行動は、人々が日常生活の中で経験的に獲得してきたヒューリスティック的な行動パターンであると考える。これより、集団間競争時と非競争時における、ヒューリスティック的な行動パターンの存在意義について、適応課題の解決の観点から議論する。

集団カテゴリーに付与された「意味」 ―集団間行動に関する実験研究―

http://lynx.let.hokudai.ac.jp/lab/papers/masters_thesis/2001/makimura.html

これまでの社会心理学において内集団ひいきは繰り返し研究され,内集団ひいき生起の説明原理が多数提案されてきたが,現在最も有力な理論として,社会的アイデンティティー理論をあげることができる.この理論は,最小条件集団実験の結果をもとに,内集団ひいき生起の十分条件としてカテゴリー化を提案している.

社会的交換ヒューリスティック:内集団バイアスと互酬性の認知的基盤

http://lynx.let.hokudai.ac.jp/lab/papers/doctoral_thesis/kiyonari_d.html

人間は些細な基準に基づいて集団にカテゴリー化されるだけで、自集団の人間を優遇し、他集団の人間に対して差別行動をとるという結論を、実験の結果が示したからである。このような集団成員間に相互作用のない、些細な基準に基づいて作られた最小条件集団状況においても、実験参加者が自集団の成員に有利な報酬分配を行うことを示すTajfelらの実験結果は、人間は集団の一部に自己のアイデンティティーを依存しており、そのため自集団を他集団から好意的に区別する傾向をもつとする、社会的アイデンティティー理論を生み出した。この理論によれば、最小条件集団における内集団ひいき行動は、自集団との間に存在する社会的アイデンティティーにその原因があるとされている。

集団間競争が自集団への愛着プロセスに及ぼす影響

http://lynx.let.hokudai.ac.jp/lab/papers/thesis/2004/sato.html

本研究の目的は、内集団の重要性を規定する2種類の愛着 (common identityとcommon bond) の説明力のパターンが、内外集団間の関係を競争的と定義するか否かによって異なることを検討することで、集団間競争時と非競争時における心理プロセスの質的違いを明らかにすることである。具体的には、集団間競争を認知している場合には内集団自体への愛着であるcommon identity型になるのに対して、集団間競争の認知がない場合には内集団メンバーへの愛着であるcommon bond型になると予測し、2つの研究を通してその検証を行った。