文学におけるフックの用法

文学の世界では、物語などが展開していくさいの手がかりとなり、かつ心の中の常念につながるような意味内容も含むものとして「フック」がある。逢沢(2007)によれば、フックとは、発想のための重要な連想を想起する言葉や事物のことである。それ自体では、地味で目立たない言葉や事物で、ごく日常的であることが多いのだが、何かと結びついて連想されるようになる。逢沢((2007)の例でいうと、川上弘美センセイの鞄」という作品では、鞄がフックの役割を果たし、鞄を見ただけでセンセイと強く結び付けられるようなストーリー展開が予想される。


韓流ドラマを例にあげると、幼少時代のちょっとしたエピソードが、大人になった後で展開されるストーリーに手がかりをあたえるフックとして使われているパターンが多い。「春のワルツ」というドラマでは、主人公が子供のころにヒロインからもらった貝殻のアクセサリを大切に持っており、それがドラマのところどころでたびたび登場し、ドラマがこんどどうなっていくのかの手がかりを与えたり、さまざまなイベントとの連想を喚起させたりと、「フック」の役割を果たしている。このように「フック」をうまく用いることにより、魅力的なストーリー展開が作れたりできそうである。