夢をつかむ「能力」を身につける

マクゴニガル(2012)は、「意志力−注意力や感情や要望をコントロールする能力」を鍛えて強くすれば、自分を変え、成功を手に入れることができるという。逆に言えば、健康や経済的安定や人間関係、仕事などに関して目標を達成できない最大の原因が「意志力の弱さ」であると多くの人が思っているという。そこで、マクゴニガルは「どうしたら悪い習慣を捨てて健康的な習慣を身につけられるか」「物事をぐずぐずと先延ばしにしないようになれるか」「集中すべき物事を決め、ストレスと上手に付き合うにはどうしたらよいか」といった「意志力」を鍛えるための最適な方法を「意志力の科学」に基づいたかたちで提示する。


まず、潜在能力を引き出すための「意志力」には、「やる力」「やらない力」「望む力」があるとマクゴニガルはいう。これは、本能に流されずに生き抜くための「自己コントロール」「自制心」の力でもある。出世も勉強も寿命もこの「意志力」で決まるという。この意志力を強化するための第一のルールが「汝を知れ(自己認識)」である。人間には、自分のしていることを認識するとともに、それを行う理由を理解する能力としての自己認識能力が備わっているという。つまり、「自己認識力」を高めることが、自己コントロール、意志力を強化するための第一歩である。そのために効果的な方法が「瞑想」であるとマクゴニガルは説く。


また、意志力は生理状態に大きく影響を受ける。例えば、闘争・逃走反応やストレス、疲労などによって意志力は弱まる。したがって、適度なエクササイズ、睡眠、体によい食事、家族や友人との有意義な時間、信仰やスピリチュアリティへの参加など、心身をリラックスさせることが重要である。屋外の自然に触れながらウォーキングをするなどの「グリーン・エクササイズ」が効果的であるとマクゴニガルはいう。また、意志力は筋肉のように鍛えられるとして「目標を決め、期限内に達成する」「あえて難しいほうを選ぶ」などの方法を紹介している。筋肉と同じで、意志力も使わなければ駄目になるというわけである。


さらに「望む力」を伸ばすということも重要だという。これは「元気が出ないときでも強さを与えてくれる力」である。「自分にとって最も大切なことを忘れない」ということも重要である。これは、目先の誘惑に負けて大事なことを先送りしてしまうことを防ぐ。そのためには、将来の自分をより身近に感じ、将来について想像し、目標を達成したときの自分を想像してみることが効果的だという。「望む力」を強化すれば、他者からの誘惑の感染から見を守る「免疫システム」を強くする。逆に、「鉄の意志をもつ人」のことを考え、お手本とし、その人の能力が感染するようにすることも効果的だという。