「仕組み型」マネジメントの教科書

山本(2011)は、自らの経験に基づき、「仕組み」を構築し「仕組み」を回すことで、マネジメントを成功させる方法を提案している。では、マネージャーはどのようにして部下を含むチーム全体が回っていく仕組みを作ることができるのだろうか。ここでは、本書からいくつかのポイントを紹介する。


まず、プロジェクト型の仕事においてはスタートが肝心だということである。ここではマネージャーを先頭とするスタートダッシュの仕組みを作る。例えば、最初の2週間でマネージャーが「一兵卒」のごとく走りまわり、仮説をつくりあげてしまう。しかも、大まかにはこれが正しいと思える仮説を、猛スピードであるべきアウトプットイメージとして作り上げてしまう仕組みを構築するのである。これがチーム全体の駆動力となる。山本は「どんな仕事も初速勝負。最初の2週間で勝負を決めろ」という。


そして次は、部下を巻き込み、部下と並走しながら仮説を修正・進化させる仕組みの構築である。仮説に意義を唱え、方向転換したり、改善したりしていくのには部下の力が重要である。部下が自分の頭で考え、詳細な「マジ?」チェックをかけ、仕事の方向性を作っていくのである。その際には「短時間かつ頻繁なミーティング」「拙速思考でその場で結論」「マネージャーはわからないふり」などの「基幹部品」を活用する。


そして、部下がオーナーシップ・マインドを持って生き生きと仕事をするための仕組みづくりである。ここで有効な部品として「24時間レスキュー体制(ER)」を挙げておきたい。マネージャーの大きな仕事は、部下が窮したときの駆け込み寺としての「ヘルプデスク」の役割である。仕事の全責任があるのはマネージャであるから、マネージャが「謝罪担当」である。そうでないと部下は安心して働けない。そしてマネージャーは部下よりも経験豊富であるからこそ、自分で仕事を抱え込むのではなく「コーチ」「レスキュー」「尻拭い」に徹するべきなのである。


適切な「コーチング」と部下の「安全」を確保することによって、部下が成長し、生き生きと仕事をするような仕組みが構築できれば、自動的にチームはうまく回っていき、業績も高まってくると考えられる。そうすれば、マネージャーとしては時間に余裕が出てくるようになる。そこで山本は「永続的自己成長」を掲げ、マネージャー自身がさらに成長するために勉強しつづけるべきだというのである。