リテラシーを高める

藤原(2010)によると、リテラシーとは、頭のいい人があらゆる局面で使っている技術であり、「理性の運用技術」だという。書かれていることをただ鵜呑みにするのではなく、批判検討を加えて取り入れていくことであるともいう。藤原氏自身の言葉でいうと、読み書きソロバンのように、脳のメモリーの中にたくさんの正解パターンを詰め込んでいくと高まる「情報処理力」ではなく、過去の経験や知識、技術をすべて組み合わせ、正解がひとつとは限らない問題に対して状況に応じた納得解を導く力としての「情報編集力」であるという。つまり、「リテラシー」≒「情報編集力」ということになる。


たとえば、本来は複雑でむずかしいことを、やさしく図に描いて説明できる力が「情報編集力」であり、リテラシーである。他人に知ってほしい自分の考え方や思いを、マンガや図などでわかりやすく伝えられれば、自分を理解してくれる味方が増えるという意味で、情報編集力は「つなげる力」であるともいう。また、書かれていることを鵜呑みにせず、「本当にそうだろうか」といったん疑ってみる。これが、批判的洞察力ないしはクリティカル・シンキングと呼ぶ態度であり、リテラシーと深く関連する。正解がひとつとは限らない状況では、まず現在の状況を批判的に分析することから始まる。ここでいう「批判的」とは、ただ文句をいったり反対することではなく、「鑑識眼がある」という意味を含んでいる。つまり「人物・行為・判断・学説・作品などの価値、能力、正当性、妥当性などを評価すること」である。自分の頭で考え、対象について主体的な意見を持つことである。


OECDのPISA調査では、リテラシーを「読解リテラシー」(自らの目標達成、可能性の発展、社会参加のために、書かれた文章を理解し、利用し、熟考する力)、「数学的リテラシー」(数学の役割を理解し、個人の生活、社会生活、市民生活において数学的根拠に基づいて判断し、数学に携わる力)、「科学的リテラシー」(自然界および人間の活動によって起こる自然界の変化についての理解や意思決定のために科学的知識を利用し、証拠に基づく結論を導く力)に分けている。これらのリテラシーはすべて、「世の中で、人生を生きるための具体的な技術の習得をイメージしている」という。