日本の発展を支えてきた人材構造

経済において、おカネは血液である。いくらきれいごとを言っても、カネの流れが止まるということは、死を意味する。よって、世の中でカネがどう動いているのかをよく理解することは、生きていくうえで非常に役に立つ。経済学を勉強するということは、こういった嗅覚を身につけるのにも役立つ。もう1つ、生きぬいていくうえで大事なことがある。それは、世の中の掟をよく知っておくこと。すなわち、法律の知識である。だから、法学部で勉強することは、生きて行くうえでの強力な武器を身につけることにもなる。つまり、日本において、法学部や経済学部で学んだいわゆる文科系人材は、おカネの流れと社会の掟に精通した、世渡りにおいては最強の人材なのである。


そして、世渡りに疎いか興味がないが、頭がよくて秀才肌の学生たちは、理工系でがっつりと勉強する。多くの学生が大学、大学院と進み、明らかに文科系学生の数倍は勉強している。こうした優れた才能を持った人材を、世渡り上手な文科系人材がうまく使うことによって日本は発展を遂げてきたのだといえるだろう。文科系人材にうまく使われながら、優秀な理工系人材が黙々と働いて価値を生み出し、高い技術力に裏付けられた日本製品が世の中を席巻したといえるのであろう。生涯賃金などで見ると、常に文科系人材が理工系人材を上回るという通説がある。そのために、理工系は実は日本では冷遇されており、理工系離れも深刻化しているという指摘もある。それはある意味的を得た指摘であるだろう。


けれども、理工系人材にとっては文科系人材が、文科系人材にとっては理工系人材が、お互いになくてはならない関係にあったことは確かである。だから、理工系離れが進んでバランスが崩れることは、日本にとっても危機なのである。