史上最強の処世術

史上最強の処世術の1つとして数えて間違いがないと思われるのが、老荘思想である。守屋(2009)は、老荘思想といえば、隠遁とか隠者に結びつく思想を含んでいることを否定はできないが、じつは、すぐれて処世の知恵であるという。逆境に立たされたとき、それを乗り越えるにはどうすべきか。乱世を生き抜く処世の知恵の数々が語られているというのである。


もちろん、一口に老荘といっても、老子荘子では説くところが違うと守屋は言う。老子の関心は外側に向かい、社会の中でも明哲保身を説くのに対し、荘子の関心は内なる自己に向かい、逆境を内側から越えようとする。老子は処世の知恵、荘子は解脱の知恵だといってよいと指摘する。両者に共通しているのは、乱世に処するうえでの、老獪きわまりない生き方なのである。