数学はなぜ役に立つのか

瀬山(2009)によれば、数学は最古の学問と言われている。とりわけ西洋数学は、証明や記号の合理的な使用法、他の自然科学からの影響とともに、単なる計算技術ではなく、自然観や世界観などの思想と結びつくことで、統一的な基準として発展してきたと考えられる。さらに「理由を知りたい!」という人類共通の知的好奇心も大きく影響している。


数学の根幹をなす特徴は、抽象的な概念を司る学問だということである。古代では、数学によって、詭弁に惑わされない合理的な判断力が培われると考えられていた。数学を学ぶことは、人が長い歴史を通じて築きあげてきた文化を学ぶことであり、そういった知識や技術が私たちの文化を土台で支えているのである。


数学を勉強して得られることは何か。例えば幾何学では、三角形、四角形、円などのきれいな図形から、それらに隠されたいろいろな興味深い性質を取り出して理解することができる。さらに、図形の性質を「当たり前の事項」を前提にして論理的に証明する「論証」という学習もできる。ユークリッド幾何学では、すべての人にとって自明と思われる事実から出発して、三段論法の積み重ねで、ある事実が正しいとする数学の方法つまり公理的思考が学べる。この方法は、物事が正しいことを明確に示すためのもっとも規範的な学問のあり方として他の学問の模範になってきたわけである。