意思決定力を鍛える

カーナビを使って運転をするようになると、道を記憶することや方向感覚が退化していくように思える。本田(2009)は、カーナビに道案内を任せるのは危険であるのと同様に、人生においても他者に任せるのは危険であり、現代では自分で運転する「人生の運転技術」が衰えつつあるという。それは、情報収集力や選択肢の抽出力、シミュレーション力やリカバリー力といった、本来は持っていた感覚や能力であり、一言でいえば「意思決定力」である。これらを鍛えなおす必要性を本田は主張する。


意思決定力は、どれだけ矢面に立つ経験を積んでいるかに左右される。だから、積極的に責任ある仕事を引き受け、矢面に立つようにすることが重要である。トラブルがあったとしても、それはすべて「意思決定の練習」と捉え、自分のスキルを磨く道具にしてしまう。


情報収集にきちんと投資をし、時代のうねりを常にインプットしておくことが重要である。そして、問題を整理整頓し、想定されるリスクを徹底的に把握し、最低限達成する必要のあるボトムラインを決めておく。シミュレーションを繰り返し、コンティンジェンシープランを練っておく。


そして、実際の意思決定は「見込み6割」でどんどん行い、あとの4割は行動しながらカバーするのがよいという。その際、つまずいたとき、失敗したときのリカバリー力も重要である。本田は、優秀な経営者で「勘が鋭い」といわれる人ほど、大胆な意思決定と緻密なリカバリー計画をセットにしているようだと指摘する。