偶有性とひらめき

神田(2009)は、脳がフル回転するメカニズムとして、「偶有性」を紹介している。偶有性とは「半ば規則的で半ば偶然の出来事」である。「完全に予測することはできないけれど、ある程度は予測がつく」状態とも言える。例えば、サスペンスや時代劇といったドラマ。このような偶有性に接したときに、脳は魅了され、並々ならぬ集中力を発揮するという。


ニュートンがりんごが落ちるのを見たときやアインシュタインが光に乗って宇宙旅行をすることをイメージした例にあるように、偶然のイメージに論理による検証が加わったときに、価値あるひらめきが起こった事例がいくらでもあると神田は言う。日常生活でも、車の運転中眺めていた光景から突然アイデアが沸いてきたり、友人と飲んでいるときに予想外の方向に話が行き、ふいに答えが見つかったり。読書をしているときにイメージしたことからアイデアがひらめくこともある。情報を整理することが目的の論理的思考では偶有性が発揮されにくいのである。


神田は、イメージを使って思考するというCPS(Creative Problem Solving)を紹介しているが、なぜそんなイメージが思い浮かんだのかよくわからない場合がある。浮かんでくるイメージは論理的な積み上げによるものではなく偶有性も反映しているから、それを手がかりに議論することによって創造的な問題解決が促進されると考えられる。ただし、CPSで出てくる問題解決は仮説にしかすぎないので、CPS(イメージ思考)でアイデアを広げ、ロジカル思考による検証で結論に収束させるという組み合わせが有効だという。