感動を呼ぶ発想のテクニック

小阪(2008)は、感性デザインという視点から、売れないのは感性情報デザインが適切でなく、お客さんが欲しいと思わせる感性情報デザインが必要だと説く。お客さんを感動させる「ぶっとんだ解(飛躍)」をどれだけ出せるかが成功のカギとなる。そのための、いくつかのテクニックを紹介している。


まずは、発想するためのリソース(資源)を増やすこと。自分独自のアイデアをひねり出すための引き出しのようなもので、他の人が考えたことや実行したことを自分の頭の中に資源としてたくさん持っていればいるほど、アイデアは豊富に生まれやすくなる。例えば、現状打破の突破口を見つけようとするとき、たくさんの事例を知っていると、どの事例が使えるかを頭の中で検索し、有望な事例を引っ張り出して参考に出きる。そして自分の仕事に使えるようにアレンジしていく。つまり、頭の中で検索エンジンが回り始めたときに、使えるデータベースが充実していることで、次の一手や突破口が見つけやすいということだ。


次に、自分が扱っている物事の価値を伝達する。自分が関わっている仕事をよく眺めてみて、そこにある価値がちゃんと相手(お客さんや社内の人など)に伝わっているかチェックする。伝わってなければ伝えようとしてみる。


そして、自分が仕事で試したことや、上手くいったこといかなかったことを、第三者に説明する。わかってもらうことを目的にまとめてみる。このようなアウトプットを「外化」という。


時には立ち止まり、自分の周りの現象や自分自身をよく見てみる。出張時に知らないまちを歩いてみる、列車の車窓から風景をぼんやり見てみる、天気の良い日に公園で青空を見上げてぼっとする、などのひとときが大切である。そうすると、ふと、今まで見えなかったことが見えることがある。


感性情報のデザインには「飛躍」が期待されている。「なぜ、こんな情報からこんな案が」というような飛躍があればこそ、お客さんの感動を呼ぶ。「ぶっとんだ解」をひねり出すためには、感性社会のフレームを知り、それを持ち、そこから世界を見、そして行動する。行動量・経験量の増加によって経験からしか得られない知が蓄積されれば、感性社会の仕事を決することになる。


自分が飛躍的に進化を遂げられる「場」すなわち実践コミュニティに参加することも必要である。予測不可能な感性社会で未知の領域へ挑むには、「創発的協働の場」すなわち、同じ目的を持つ者同士が協力して学び合い、支援し合い、いろいろな関連する要素の相互作用から新しいものが生まれる「創発」のプロセスを共有するのが有効なのである。