ルーチン化していく職種にご用心

例えば、それができる人材の絶対数が少ないために需要が供給を上回り、高給になっている職種、あるいは高度な技術を要するために高給になっている職種があるとする。しかし、現在はその職務を遂行するプロセスが本人の能力の依存しているためにブラックボックス化されていても、それが将来的にはルーチン化、標準化していく可能性のある職種の場合は要注意である。そのうち、一気に市場価値が下がり、安月給になってしまうかもしれない。


とりわけ、高度な技術は、それがいったんルーチン化(きまった作業の繰り返しで遂行可能なタスクに分解できるようになること)されると、それは機械やコンピュータが人間の代わりにできるようになるし、標準化されて必要な知識やスキルがはっきりしてくれば、なにも正社員を雇わず、その仕事の部分だけを切り離してアウトソーシング(外注)したり、派遣社員契約社員に任せるということも可能になってくる。そうすると、過去には高度なスキルを要する専門職として見られていた職種が、必要であれば雇い、必要がなくなれば市場に放出される部品のような職種に成り下がってしまうのだ。


では、このように、ルーチン化・標準化され、希少性がなくなってしまう可能性の少ない仕事にはどのようなものがあるか。ひとつは、ルーチン化するのが困難な、複雑性・創造性を扱う仕事である。常に今までにない、新しいもので、かつ人類社会や企業に価値をもたらすものを生み出していく能力というのは、誰でもできることではないし、ましては機械やコンピュータに置き換えることもできないだろう。また、コンピュータなどはいったん問題がはっきりとしたときにどう解いていくかは得意かもしれないが、問題がどこにあるのかを発見するといった着眼が必要なスキルは持ち合わせていない。このように、複雑な事象から的確に問題を発見できる能力もルーチン化されない高度なスキルである。


次に、コミュニケーションなどの人間関係をうまく扱う能力を要する仕事で、マネージャーや営業職のような仕事も、ルーチン化されにくい。対人的な扱いはコンピュータでは置き換えることができない部分が多々ある。例えば、人々を束ねて、ベクトルを1つの目標に統一し、大きな仕事を成し遂げるようなリーダーシップだ。営業場面においても、単にお客さんが欲しいものを提供するという売り方ではなく、お客さんをある方向に引っ張っていく(誘導していく)ようなりーダーシップ能力が求められることもある。


これらの能力を身に着けることによって、一般の人ではなかなかできない希少な人材、つまり「この類の仕事はアイツしかいないオンリーワン」になることができ、容易に陳腐化しにくい、ルーチン化しにくい仕事につくことができるようになるだろう。そうすると、いったん高収入の仕事に就けたら、それを維持することが可能であろう。もちろん、日々の精進も必要ではあるが。