Aクラスジャーナルへの条件付採択


私の専攻分野ではAクラスジャーナルと呼ばれているトップジャーナルから、論文が条件付き採択を受けた。最初に投稿した原稿は査読に回り、1ヶ月半後に出た結果は、改訂後再投稿。1ヶ月半ほどかけて改訂した原稿を再投稿、それが同じ査読者に回り、さらに査読者が1名追加され、その結果が条件付採択。これは、まだ論文が改善の余地があるので、さらなる改訂が必要だが、改訂された論文は査読者には回らず、改訂の良し悪しを編集責任者が判断し、最終的に採択(掲載)かどうかを決めるというもの。


条件付採択になったからといって、査読者および編集責任者からの改訂要求のなかにはまだまだチャレンジングなものがあり、その要求を満たさなければならないので気が抜けない。さらに最終採択にむけていままでと同じくらい努力しなければならないのだ。


論文の投稿を山登りにたとえるなら、掲載される論文のクオリティが最も高いトップジャーナルは、ものすごく高く、険しい山を登るようなもの。採択率が低いということは多くの論文が落ちてしまう。査読者も一流なので手厳しいことこのうえない。改訂後再投稿のチャンスが与えられても、改定箇所の要求が厳しすぎて戦意喪失ということもある。そのような苦難に立ち向かい、ブレークスルーを生み出して論文のクオリティを高めることができるためのねばり強さが求められる。しかし、粘り強く改訂すれば、見違えるほど論文が良くなり、トップジャーナルの査読プロセスのすばらしさも実感する。徹底的にたたくことによって論文を鍛える。まさに、多くの人の力をあわせてインキュベートされた論文が掲載されるのだ。条件付採択は、いよいよ頂上が見えてきた段階だが、そこにいたるにはまだ険しい道を登らなければならないという感じだ。


査読コメントに対応して改訂を行う作業は、ウエイトトレーニングにたとえれば、自分にとってめいっぱいのウエイトがかかっている状態。容易には解決困難に思われる弱点を改善しないとクリアできないという厳しい負荷がかかった状態だということだ。この状態を場合によっては数ヶ月維持しなければ、問題をすべてクリアする改訂ができないのである。苦しいのだけれども成功のためには絶対に必要なプロセスというところか。


ただし、実際にトップジャーナルに何度か投稿した経験からいくと、運の要素も大きい。自信がある論文でも、担当する編集者や査読者によっては掲載不可になってしまう。反対に、今回の場合、掲載される論文のクオリティレベルとの比較において、やや苦しいかというレベルであったが、編集者や査読者に恵まれ、かなり好意的で育成的なフィードバックをもらった。つまり、懇切丁寧に、論文を掲載可能なレベルにまで高めるための建設的なフィードバックを行なっているということを感じるのである。


今回の論文は、共著であるので、それぞれの得意分野を生かしつつ論文のクオリティを高めている。単著でチャレンジする手もあるが、論文のすべての部分でハイ・クオリティを要求されるトップジャーナルへの投稿は、理論部分やデータ分析の部分など、それぞれを得意とする人でチームを組んで役割分担をしてかからないと手ごわすぎる。また、チームを組むことで、孤独に悩むことなく努力を持続させることもできるし、成果の喜びを共有することもできる。