長い文章を書く方法

書き下ろしの単行本の執筆のように、長い文章を書くときにはどういった点に注意したらよいだろうか。鷲田(2006)は、以下のようなコツを紹介している。


まずは、自分の「視点」を持つことだと鷲田は言う。「立場」や「視覚」と言い換えてもよい。これは、レンガを積み上げてゆく場合の「完成」(エンド)を視野に入れた全体見取り図としての役割を担う。ワン・フレーズ(主命題)でよい。どんな短い文章でも、どんな巨編でも、全体を貫く「視点」がないと、細部を積み重ねていっても、全体と細部が結びつくことがなく、首尾一貫しなくなってしまう。だから、単行本などについては、その内容のポイント(全体を貫く視点)は、ワン・フレーズで語れると見てよいだろう。


ワン・フレーズで語れる主命題に、3つの章命題がつき、3本の章命題に、さらに3つの節命題がつくと、プラン基本表(=目次)ができると鷲田はいう。つまり、全体を3分割法で細かくしていく。ワン・フレーズがあり、全体の見取り図があれば、途中で多少脱線してもかまわない。途中下車して道草を食っても、すぐに本線に戻れるからである。


このワン・フレーズ(主命題)は、本でいうならば、アピールするべき点もしくはセールスポイントである。であるからして、最も重要である。このセールスポイントとなる命題を、さらにセールスポイントを探って命題化し、章命題、節命題としていくわけである。


次のポイントは「長文は短文の連なったものだ」ということである。1つの短文は、前の短文を受け継ぐというように、短文は、長文を構成するレンガの1つだと考えることができよう。だから、短文がしっかりと書けるということが、長文を書くための必要条件なのである。また、書く枚数(分量)を決めることも重要だと鷲田はいう。分量が決まれば、見取り図としての目次が決まる。そして、その目次を構成する個々の命題すなわち短文を、しっかりと書く。全体の見取り図があるから、それを目印に短文を書いていけば、あたかもレンガを重ねて壮大な建物を作るかのように、おのずと短文が連なり、首尾一貫した長文になっていくのである。