小説の読み方

石原(2002)によれば、受験小説の読み方とは「書いてないことを読むこと」「行間を読むこと」である。受験小説のほとんどは「リアリズム小説」すなわち目に見えるものだけを客観的な事実として書く技法で、そこから、書かれてはいない主人公の気持ちなどを読み取る問題が出題されるというのである。設問で「気持ち」が問われるのは、それが「書かれていない」からである。


また、石原(2002)は、受験小説は、小説から物語文を作り出す能力を問うものだと言う。「気持ち」の向こうにはいつも物語文が働いている。物語とは「はじめ」と「終わり」で区切られた出来事であり、「はじめ」から「終わり」に進むにつれて、主人公がある状態から別の状態に移動したり(〜をする物語)、ある状態から別のある状態に変化したりする(〜になる物語)。その移動や変化を一文に要約したものが物語文である。物語文によっては主人公が入れ替わることもある。


そもそも小説の読み方には無限の可能性があるが、受験小説では、そこから出題者と同じ「物語」を取り出せるか(作り出せるか)が鍵となる。物語は、二項対立的に、「同じ」と「違う」の葛藤で構成されると説く。例えば、「同じ」ものが「違う」ものになるか、「違う」ものが「同じ」ものになるかすると、物語の「終わり」だと感じられる。


ちなみに石原(2002)は、小説の記述式問題を解くための5つの法則を紹介している。センター試験では、以下の5つの法則と消去法を組み合わせて解くのが鉄則だと言う。

  1. 「気持ち」を答える問題には隠されたルール(学校空間では道徳的に正しいことが「正解」となるなど)が働く。
  2. 受験小説は「道徳的」で「健全な物語」を踏まえているので、それに否定的な設問はダミーである可能性が高い。
  3. 正解は「曖昧模糊」として記述からなる選択肢であることが多い(ダミーと比較して正解が浮きだってしまわないように)。
  4. 「気持ち」を問う設問は傍線部前後の状況についての情報処理であることが多い
  5. 「正解」は似ている選択肢のどちらかであることが多い(難易度を高めるため、どちらか一方をダミーにする)。