企業意識改革の要諦

現在の企業の文化や風土に問題があり、企業が活力を取り戻していくためには、社員の意識改革が必要不可欠であるという結論に至ったとしよう。


実は、企業の意識改革という面でいうならば、既存の従業員の意識を変えることよりも、既存の従業員の意識とは異なる意識をもった人材を入れ、好ましくない意識をもった従業員を輩出していくほうが効果が早い。なぜならば、長年染み付いている意識というのはそう簡単に変えることができるわけではないからだ。また、そういう意識を生まれつきもっている人が好まれて採用されてきたわけだから、なおさら、既存の従業員の意識を変えることは難しい。それよりも、生まれつき異なる意識をもった人材を採用していって、その人々が組織の多数派を占めるようにしたほうが確実に決まっている。


だから、本当に意識改革が必要ならば、確実なのは、入口としての採用から、意識的に違う人材を採っていくことである。そうすることによって、5年、10年とたてば、確実に意識は変わる。なのに、多くの企業では、募集・採用活動を、重要な企業変革の要諦として捉えていないように思える。10年といった長い目で見る必要があり、効果が出てくるのが遅いから辛抱できないのはわかるが、確実に変わるのだから真剣に取り組むべきである。それで、どうしても頓服やカンフル剤のような即効薬が必要ならばそれも併用すればよい。


意識改革は体質改善と同じで、一朝一夕にできるものではない。体質改善とは、生活習慣を変えることであり、食べるものが変わるから(そして人間の身体は食べたものでできているから)、長い時間をかけて、昔食べた悪い食品の部分が身体から輩出され、改善された食事が新しい血や肉となるために、体質が変わるのである。これと同じで、インプットとしての新人を異なるタイプの人々にしていくことによって、古くて望ましくない意識をもった人材が時間とともに輩出されるという新陳代謝を繰り返しながら、企業の体質も変わっていくのだろう。